Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
一
IF
「わしも太一君を送りにきただけだべ。なっ里夫」
「キー!」
ご隠居の言葉に彼の肩にいたムササビが手をあげる。
リオ、ということはペットだろうか。
(ん? でも獣人ってペットを飼うのかな?)
そういえば、太一の友人に里夫とかいう少年がいたが、
彼も確か獣人でななかっただろうか。
(もしかして、このムササビがあの子、とか?)_
涼介は少し頭が混乱してこめかみに手をやっていると、
芽衣子がリオを覗き込んだ。
「そうだったんですか。はじめまして、里夫君」
芽衣子が指をリオへ差しだし握手のような格好を取ろうとしたその時、
遥か後方でパンッっと大きく手を叩く音がこだました。
「皆様! そろそろお部屋のほうへお入りください」
振り返ると、ほれぼれするような良い姿勢で碧が立っていた。
「碧さん!」
涼介は碧へ向かって叫ぶ。
その横でみのりが脱力したように肩を落とした。
「碧。助かったわ……」
心底ほっとしたように告げられた言葉に、胸の奥がちくりと痛んだ。
(なんだ?)
自分の感情の不可解さに眉根を寄せる。
だが、なぜ、と考える間もないうちに、女将の声が響いてきた。
「お茶を用意いたしておりますので、どうぞ奥へお進みください」
涼介は釈然としない思いのまま、
宿の前で迎え入れてくれている女将と碧の元へ急いだ。
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