Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




IIE




「ふふふ、わかった!

お兄ちゃんたちは喧嘩するほど仲がいいってやつだね」

「え!」


 何を話しているのか。

睨みつけているこちらにまったく聞こえてこないが、

少年が涼介へ語りかける。

得意げな顔で話す太一とは裏腹に、

涼介は虚を突かれるといった様子だ。


(なんなの? 陰でこそこそ話すなんて悪質すぎるわ)


 顔を顰めながら彼らを観察していると、

おもむろに碧が口を開いた。


「お嬢様そろそろ部屋へ戻りましょう。

紅も心配しておりましたよ?」

「え、ああ。そうよね」


 助かった。碧があのまま何も言わなければ、

他者の前ではいつも被っている大きな猫の存在など忘れ、

なりふり構わず涼介へ詰め寄っていたに違いない。

みのりは内心で安堵しながら涼介から目を逸らした。


「山波さん、とそれから太一君だったかしら?

私についてきてもらえるかしら?」


 とれそうになっていた猫をしっかりと被り直し、

みのりは山波と太一へ笑みを浮かべる。

そして彼らの返事を待たずに歩き出した碧のあとをついていくと、

背後から山波の声と、付き従う足音が聞こえてくる。


「はい! もちろんですとも!」

「はーい! お兄ちゃんも行こう!」

「う、うん……」


 山波のあとを続くように太一の元気の良い声が届く。

そのあとを、太一に誘われた涼介の寝ぼけているような

生返事が続く。

やる気のない彼の声に、落ち着いたと思った怒りが

再熱しそうになる。

みのりはそれを無視することで押し殺しながら、

雪姫とともにいるもう一人の側近、紅の元へ急いだ。










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