Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




F




「わら、わは氷を所望してるのにック。氷がこないマロ」


 雪姫が横隔膜を震わせながら、なんとか太一の疑問に応える。

だが、まだ小学生の太一には難しかったみたいだ。


「所望? 所望ってなーに? お兄ちゃん」


 首をかしげる太一へ、涼介は事もなげに返答する。


「所望っていうのは『ほしい』ってことだよ」

「じゃぁ、雪姫様は氷が欲しいんだね」


 太一は、涼介の言葉に瞳を輝かせた。

涼介のどこにそんな要素があるのかまったくわからないが、

なぜこの少年は涼介へ対して全幅の信頼を寄せているのだろう。

そんなに深い付き合いなのだろうか。


(そういえば涼介も碧にあんな視線を向けてるわよね?)


 仕事面だけ言えば完璧と言える男ではあるが、

性格を知ってしまえば決して尊敬できるような人物ではない。

その側近に涼介が向ける眼差しは、

太一が涼介へ向けているものとなんら変わらない気がする。

男性というのはそういうものなのだろうか。

女の身である自分には理解できない価値観があるのかもしれない。


(でも絶対騙されているわよね)


 しかし、それを彼らへ告げたところで

素直に受け入れられることはないのだろう。

それだけは断言できる気がした。










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