Gold Plum
第四章
疑惑
〜みのり&麻里の場合〜
一
I
「ああ、そうでした。そうでした。用件でしたね」
こちらのテレパシーが伝わったのか、ふいに碧が説教をやめる。
そしてコホンと咳払いをすると、
ようやく本来の目的を語り始めた。
「宿で皆さんと話し合った氷に縁のある場所について
もう少し話し合う必要があると思いましてね。
山波さんにもぜひ参加していただきたいと思いまして
ご連絡させていただきました」
『お……わたくしは!』
聞こえなかったはずの山波の声が部屋に響き渡る。
どれほど大きな声を出したのか。
突然の大音量に、碧も耳を痛めたのだろう。
眉間に皺を寄せ、携帯を耳元から外している。
しかし、声の主である山波はいまだに興奮しているのか。
声が小さくなることはなく、
こちらにまではっきりと聞こえる声で碧へ話しかけていた。
『……次期当主であるみのり様を怒らせてしまった不届き者ですから
とても顔向けできません。
参加なんかしちゃあまた和を乱してしまいやすから』
山波の大きな声に耳をつけたくないのだろう。
碧は、テレビ電話でもするかのように携帯と対面して話している。
それはまるで機械である携帯へ苦言を呈しているようで、
傍から見ているなんとも言えない光景だった。
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