Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




IA




「それは私ではなく、お嬢様に直接会って言ってあげてください」


 みのりが一人、悶々としている間も

碧と山波の会話は終わっていなかったようだ。

しかし、いつの間にか山波は冷静さを取り戻していたらしい。

しゃがれた山波の声が聞こえなくなり、携帯と対面していた碧が、

携帯を耳へ当てていた。


 やはり直接会って涼介へ一言物申すべきかもしれない。

あんな男に振り回されていること自体が腹立たしく感じ始めた頃。

ふいに目の前に座っていた紅のつぶやきが聞こえてきた。


「お嬢さま、最近涼介のことばっか……ずるい」


 紅が頬を赤く染め、微かに潤んだ瞳を向けてくる。


(え? 紅も涼介のことが?)


 恋する乙女のような表情を見せる紅に、

みのりはドクリと心臓が鼓動した。

ツキンとした痛みに、ブルーのシャツの胸元を手繰り寄せる。


(って、『紅も』って何よ。『も』って!

別に私はあいつのことなんかなんとも思ってないし……

だいたいあいにはいつもイライラさせられてるじゃない!

でも優しいのよね

……憎まれ口ばかり言ってたのに守ってくれたし……)


 身代わりになって銃弾がかすってしまった傷は大丈夫だろうか。

涼介がケガをしてしまった場所と同じ頬をなでる。

傷のないつるりとした感触に胸が苦しくなった。










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