Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




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「それでは申し訳ありませんがその長老さんたちのお1人でも

良いので明日伺えるかご連絡していただいてもよろしいでしょうか?」


 山波と話を詰めていく碧を観察していると、

側近が困ったような素振りを見せる。

何か不都合でも起きたのだろうか。固唾を飲み、耳をそばだてた。


「そうなのですか?……それは困りましたね。

長老さんたちのお話が聴ければ氷に縁のある場所がわかると

思ったのですが……」

(え? 長老さんと連絡がつかないの)


 やはり人間との関わりを持ちたくないと言われていたのだろうか。


(わざわざ人間である太一君や先生を

送ってくれたくらいの人だから大丈夫だと思ったのに……)

「……鹿さん」


 みのりが今後について腕を組みながら黙考していると、

紅の囁くような声が聞こえてきた。


「え? 何? ごめんなさい、紅。聞こえなかったわ」

「……長老、鹿さん、頼めばいい」


 訊き直し再度繰り返してくれた紅の言葉に目を瞠る。


「そうね。山波さんには飛田さんがいるんだったわ。

紅、ありがとう」


 微笑む紅へ笑みを送る。

そして話が難航しているであろう碧へ視線を向けた。

しかし、彼らのほうでも同じ打開策へたどり着いたようだ。

「娘さんにですか? それは助かります。

それでは明日、お待ちしておりますね」


 同じ獣人からの打診だったら長老も無下にはできないだろう。

みのりはホッと無意識に詰めていた息を吐き出す。

そして電話を終え、戻ってくる碧へ笑みを浮かべた。










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