Gold Plum
第四章
疑惑
〜みのり&麻里の場合〜
二
D
「ふふふ。仕方ありませんね。山波さん、おはようございます。
周囲の目もありますのであまり目立つ行為は……」
「は、そうですな! 重ねがさね申し訳ございません……」
「いえいえ、とんでもございません」
碧の言葉に山波がようやく立ち上がる。
ホッと安堵していると、碧が芽衣子へ視線を向けていた。
「それより本日は車まで用意していただいたようで、
ありがとうございます」
「飛田君に連絡したら連れてってくれるって言ってくれたので
甘えちゃいました」
「ありがとうございます」
「鹿さん、いい人」
芽衣子へ礼を言うと、紅が降りてきた飛田へ向かって手を振る。
「こんにちは。どうぞ、早く乗ってください」
「飛田さん、今日はよろしくお願いします」
「雪姫様の生まれ変わりなら、
あなたはぼくらにとっても神聖なお方ですから」
「生まれ変わり、ですか……ありがとうございます」
飛田に悪気がないことはわかっている。
だが、瞳を輝かせながら発せられた彼の言葉が心に小さな切り傷を
作っていく。
人間だろうが獣人だろうが自分を個人として見てくれるものは
いないのかもしれない。
みのりは慣れ親しんだ痛みに気づかない振りをして、
自嘲気味に笑った。
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