Gold Plum
第四章
疑惑
〜みのり&麻里の場合〜
二
H
「しかし妙ですね。たしか獣人の現長は我々に嫌悪を抱いていたはず……
その彼が人間を助けるなんて……」
顎に手をあて考え込む碧の言葉に、麻里はどきりとする。
『今度会った時は敵同士だ』
あの言葉がまた頭を過り、胸が軋んだ。
痛い、痛い言葉。
(どうしたら彼を救えるのだろう)
臍を噛んでいると、山波の娘が確認するように飛田へ尋ねた。
「そうなの? 飛田君」
「う、うん。僕も珍しいと思うよ」
若干戸惑った様子で頷く飛田を見て、麻里は落ち込む。
(同じ獣人の中でも有名なくらい満さんは人間を誤解しているのね……)
ということは、自分も嫌われているということだろうか。
(敵ってことは、満さんは私のことも嫌いってことなのかしら……)
満に嫌われている。
その事実を思うだけで、麻里は一段と痛みだした胸をそっと押さえた。
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