Gold Plum
第四章
疑惑
〜みのり&麻里の場合〜
二
I
「飛田さんは長とお会いしたことがあるんですか?」
「昔よく遊んでもらったんですよ。悪い人ではないです」
同じ獣人とはいえ接点などないと思っていただけに、
飛田からの回答にみのりは目を見張った。
長老たちと知り合いだと知ったときも驚いたが、それ以上である。
「そうなんですか。
……飛田さんって意外とすごい人なのかしら?」
「いや、僕は全然たいしたことないですよ」
まさか囁く程度の独り言に返事がくるとは予想もしなかった。
聞く人によっては嫌な気分になりそうな呟きを聞かれ、
みのりはばつが悪くなる。
「え、あ、ふふふ」
なんと言っていいのかわからず笑って誤魔化していると、
突然山波が鼻息を荒く怒鳴ってきた。
「何言ってる!
アイツは我が家をめちゃくちゃにしたんだぞ!」
唾を飛沫させる勢いで喚く山波へ、
碧が顎へ手をあてふむ、と頷いた。
「そういえば、そのようなことをおっしゃっていましたね。
たしか野木崎さんが一緒だったときでしたよね?」
(あーそういえば、野木崎さんが誘拐されたとき、
犯人はその獣人だって山波さん言っていたっけ)
みのりは今と同じように声を荒げ、
顔を真っ赤に染めていた山波の姿を脳裏に浮かべた。
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