Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




II




 車はゆっくり減速し、椿の塀の中へ入って行く。


「さて、着きましたよ。みなさん。

駐車はちょっと苦手なんだけど……」


 飛田が言いながら危なげなく駐車する。

その隣で芽衣子が満面の笑みを浮かべていた。


「さすがは飛田君ね」

「けっ!」


 頬を赤らめ恋人を見つめる娘の姿を見たくなかったのだろう。

山波は面白くなさそうに、そっぽを向いた。


「飛田さんの謙虚さは美徳だと思いますが、

すぎるのはあまりお勧めしませんよ」

「は、はあ……」


 碧からの助言は、飛田には伝わっていないらしい。

首を傾げる青年へ向かって、みのりは礼を伝えながら車から降りた。


「碧、余計なことを言わないでいいから。

飛田さんありがとうございました」

「いいえ。とんでもないです」


 運転席から回り込み、駆け寄ってくる飛田が

誰もいなくなった車内を覗き込む。


「みなさん、忘れ物はないですか?」

「ありませんよ」

「ない」


 飛田の言葉に碧と紅が返答するのを耳にしながら、

みのりは芽衣子へ話しかけた。


「芽衣子さんもありがとうございました。

デートの邪魔をしちゃったんじゃないですか?」


 もしそうならば悪いことをしてしまった。


「え! で、で、デートだなんてそんなそんな!」


 謝罪を口にしようとする前に飛田が、素っ頓狂な声をあげた。










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