Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




IB




「んでな、梅田のみ様の優しさに惹かれた朔ちゃんのご先祖さんは

恩返ししたいと梅田のみ様のあとを追ったそうだべ」


 身振り手振りを加えながら邦夫が語っている。

それが面白かったのか、麗が柔らかな声を立てて笑った。


「くすくす。でも相手は狼でしょう。

梅田様は狼につきまとわれて困ったのかもしれないわ。

雪姫様に相談をされたそうなの」

「確かに、困っちゃうかもしれないですね」


 麻里が苦笑しながら、頷く。


「雪姫様に説得されそうになったわしのご先祖さんは

それを逆手にとって、人の姿に変えてもらえるよう雪姫様に

お願いをしたんだべ」

「かっこいい!」

「そうかあ?」


 年齢の差もあるだろうが性別の違いだろう。

麻里がうっとりと手を合わせているのに対し、

山波は腕を組んで首をひねっている。

対照的な二人を微笑ましそうに見つめながら、

麗が続きを口にした。


「お優しい雪姫様は朔ちゃんのご先祖様の

真摯な願いを受け入れて彼を獣人へと

変化させくださったのよ」

「なるほど!」


 山波のあとを高松の感心したような声が続く。


「へえ……」

「側近である梅田のみ様より

狼の願いを聞き入れちゃったのね……」


 人へ変わった狼を見た時はさぞ驚いたことだろう。

まさか雪姫が、獣のほうを尊重するとは

思ってもみなかったはずだろう。

みのりは心の底から梅田のみに同情した。


(でもあの雪姫ならやりそうだわ……)


 涼介と別れてから鞄の中で眠り続ける小さな雪姫を思いながら、

みのりは嘆息した。










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