Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




II@




「冗談じゃないわよ!

なんでわざわざあんな奴がいる場所へ行かないといけないのよ!」


 のほほんとした青年の顔が頭をよぎるたびに

腹立たしさが増してくる。


(だいたい小さい頃のことなんか持ち出して

女々しいったらないんだから!)


 収まらない怒りをこれ以上吐き出したくなくて、口をつぐむ。

自分のせいだと重々自覚はある。

だが、長老たちと山波の気まずそうに顔が余計に苛立ちを誘った。

重苦しい空気が部屋中に広がる中、麻里の暢気な声が響き渡る。


「あら、なら仲直りできていいかもしれないわね」


 あっけらかんと言い放つ言葉に、みのりは声を裏返らせた。


「な、仲直りなんて、

別にあいつと仲良くなんてなりたくありません!」

「そうなの? お似合いなのに」

「……チッ」


 横で紅が小さく舌打ちをしたように聞こえたが、

それを確認するどころではなかった。

みのりは見当違いなことを言ってくる麻里へ

急いで訂正の言葉を口にした。


「お、お似合い! 何言ってるんですか!

そ、そんわけじゃないでしょう」

「あらあら、ここでも恋の話が? 若いっていいわねー」

「いいですよねー」


 微笑ましいと言わんばかりに頷き合う麗と麻里の声が、

一瞬にして室内の空気を和ませた。


(絶対勘違いしてる……)


 だが、こういう状況中で反論をすれば

逆に墓穴を掘ってしまう恐れがありそうだ。

みのりは口の開閉を繰り返すだけで、何も言えなくなる。


「私はお嬢さんと満の仲も気になりますけどね。

……ふふふ。あら、噂をすればですね」


 麗が優しげな笑みを麻里へ向けると、何かを感じ取ったのか。

声を弾ませながら居間の入り口へ目線を移動させた。










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