Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




ID




(な!)


 長の言葉に体温が一気に上昇する。

みのりがパクパクと口の開閉を繰り返していると、

市長が側頭部へ手を当てた。


「いや、当たり前なわけがないんだが……。

いや、まあいいか。涼介のことか? 

……まあ、それはたぶん間違いない、と言いたいところだが、

よくわからん」


 市長が曖昧な返答をする。

否定の言葉が出てくると思っていただけにみのりは混乱した。


(間違いないって断言しておきながらわからないってなんなのよ!)


 憶測だけで語らないでもらいたい。

みのりは激しく動悸する心臓を服の上から掴んだ。


「わからねーのかよ。

だが、惚れてる可能性のほうがたけーってわけだな。

今のうちに切ったほうがいいんじゃねーのか?」


 小指で耳の穴をほじりながら呆れた様子で呟く満へ、

市長がゆっくりと首を横へ振る。


「その心配はない。

どんなに想いが強かろうが、結局はこちら側につく。

そういう奴だよ」


 自信ありげに市長の口からこぼれた言葉に心臓がドクリと鳴る。


(そうよね。そういう奴だものね……)


 心のどこかで仲間になってくれるかもしれないと

期待していたのかもしれない。

みのりは突き付けられた現実に下唇を噛んだ。










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