Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




IF




「学園近くか……

わざわざ氷を探してる次期当主と別行動するくらいだ。

そこに重要な何かがあるってことなんだろうな」


 満がこちらの聞いてもらいたい疑問を口にする。

みのりは彼に感謝しながら、市長の答えを待った。

しかし、市長は素直に正解を言うつもりはないらしい。


「いや、今頃どこぞの大人にこっぴどく叱られている頃だろう」


 操作していた携帯をしまう市長に、

満は眉間に皺を寄せため息を吐く。


「あんたと違ってずいぶんと要領のわりー奴なんだな」

(ちょっとなんでそこは深く追求しないのよ!)


 市長のほうが一枚も二枚もうわ手だったようだ。

聞きたい情報が聞けず頭を掻き毟りたい衝動に駆られる。


「確かに。器用なほうではないかな」


 市長がくすりと小さく笑う。その笑みにみのりは目を見張った。


(市長もあんなふうに笑うんだ)


 嘲笑や愛想笑いくらいしか見たことのない市長が、

慈愛に満ちた柔らかな微笑みを浮かべている。


(家族のために生きてるってのもあながち間違いじゃないのかしら?)


 さっきは満同様全否定をしてしまったが、

そうではないのかもしれない。

みのりは心の隅に市長の笑みを記憶しておくことにした。


「それじゃ、俺は引き続き次期当主の動向を探ることにするかな。

あんたは弟の尾行だろ?」


 満が話をまとめようと市長を見る。

すでに彼の顔からは笑みが消えていた。

代わりに苦虫をつぶしたような表情を満へ向ける。


「うん。……まあ、な……」

「なんだよ。ハッキリしねーやつだな。何かあるのか?」


 満はイラつきを隠そうともせずに、

舌打ちをしながら市長を問い詰めた。










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