Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




IIF




(学園で話したことなんてほとんどないのにどうして……)


 分からないことを質問する教師と生徒のような間柄だったのなら

まだわかる。

しかし行き帰りの挨拶程度しかしたことのない相手に

『正しい人だ』と認められても嬉しくなかった。

それどころか、疑心や嫌悪感を向けたくなる。

みのりは麻里の真意を探ろうと、彼女を凝視した。

だが彼女は口をつぐんだまま満から目線を逸らすように俯いている。

そんな麻里に向かって、満が労わるかのような優しげな声で語り出す。


「そうか。それならそれでいい。でもな、麻里。

お前が味方した人間が正しいって誰が決めたんだ? お前か?

お前の判断はいつも正しいのか? 俺はそうは思えねーよ。

……だから俺たちは敵同士なんだろうな。

わりぃ。どうでもいいことだったな。それじゃあな」


 満は右手を挙げ、市長が歩いて行った道と同じ場所を歩き出す。

それを麻里が止めに入った。


「待ってください! お願いだからみのりさんと話し合って! お願い!」


 廊下の柱にしがみつくようにして手をつきながら麻里が頭を下げる。

しかし、彼女の今にも泣き出してしまいそうな顔を

満が見ることはなかった。


「話し合いなんてする必要はねーよ。言ったろ?

俺は俺のしたいようにするんだって!」

「満さん! ……満さん……」


 麻里へ背中を向けたまま言い切ると満はその場から逃げるように、

走り去る。

あとにはすすり泣くように満の名を口にする麻里の声だけが残った。



第四章その1 了







一つ前を読む   GPの部屋に戻る