Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


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「先生、それよりも続きをお願いします。

餌場を取りに合いになってどうしたんですか？」


　律子がうやむやになりつつあった話題を軌道修正する。

彼女の声に冴島も我に返ったようだ。


「あ、ああ。そうそう。餌場ね、はいはい。うーんと、

『仲良くせよ、と諭す太郎に蜘蛛たちは言う。

「私たちは隅を住処にしたいのです」』」

「すみ？　隅っこのすみ？」


　再び語り始めた冴島の話に太一は首を傾げながら疑問を口にする。

しかし冴島の話は止まることなく続けられた。


「『そこで太郎は考え、藤の端の新しい土地に八角形の家を作り、

それぞれを別々の隅に住まわせた』」


　太一は冴島の口から紡ぎだされる物語を

なんとか脳裏に描きながら聞く。

しかし聞き慣れない単語が出てくるたびにその想像は途切れ、

気付けば８匹の蜘蛛がそれぞれ家を背中に担ぎ行進している姿が

脳内を埋め尽くしていた。だがそんな自分とは違い、

大人たちは何か得心した様子で目配せをしている。


「藤の端……もう決まりね」

「ですね……」


　太一は自分だけがのけ者にされたような気分になり、

唇を尖らせた。