Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


�I�I�G

「そうなんですか。まぁ、どこの家庭も色々あるものね」

「あははははは……」


　律子が何事もなかったかのように話を畳む。返事に困ったのか、涼介が乾いた笑い声を立てた。


（健在って元気だってことだよね？　だから二人とも働いてて

お兄ちゃんの面倒を頼んだってことじゃないのかな？）


　太一は内心で首をかしげた。

しかし深く追求するのにためらいを感じ、 さっき訊いた昔話で意味の分からなかった単語を

冴島へぶつけることにした。


「先生、『梅の名を冠する者』って何？」

「ん？　それはもちろん梅八家のことだよ。

苗字に『梅』がついている一族が八個あるってことだね」


　容易に答えを返してくる冴島へ、

太一は眉間に皺を寄せながら唸る。


「んーってことは八つの蜘蛛は梅八家ってこと？」


　八という数字に何か意味があるのか尋ねてみると、

冴島が瞳をキラキラと輝かせながら見つめてきた。


「ほう！　それは面白い論だなあ！　僕も思いつかなかった！

将来ぜひそれで論文を書いてほしいなあ！」

「え？　え？　面白いの？」

「うん。面白いなあ。本当に興味深いよ」


　冴島が興奮冷めやらぬといったふうに近づいてくる。

何気なく口にした一言にこれほど興味を持たれるとは

思ってもいなかった。太一はどうすればいいのかわからず、

助けを求めるようにきょろきょろと視線を彷徨わせる。

そこへ涼介から救いの手が差し伸べられた。


「先生。太一君を変な世界へ誘惑しないでくださいよ」

「そうですよ、いくらなんでもかわいそうですよ、先生」

「確かに」


　涼介の言葉に友永が同意する。

そしてそのあと呟かれた彼のセリフに丸山が深々と頷いた。