Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


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「えへへへ。お兄ちゃんぼく先生に褒められてるみたい」

　太一が照れきった表情で後頭部に手をやる。

「うん。褒められてるのは確かなんだけどね……」

　教授は一度この子と決めたら結構しつこい。

機会を見つけては太一の前に現れ、

あわよくば文学部へ引っ張り込もうとするだろう。

いずれは野球好きの太一にとって

迷惑にしかならない攻防が繰り広げられることを想像して、

涼介は片頬を引きつらせた。

（案外お互い好きな野球とかで釣りそうだよな）

　文芸好きが増えることは喜ばしいが洗脳っぽいやり方をしてほしくはない。

涼介はどう言ったものかしばし考え、緩くかぶりを振った。

太一には研究室を出たあとで忠告しておこう。

胸の内で頷いて、涼介は話を畳むことにした。

「まあ、ともかく、八蜘蛛神社に行くと、

何かが起こるんだろうってことはわかってきましたね」

　急に話を終わらせようとしたのが不思議だったのだろう。

「ん？　どうしたのお兄ちゃん？」

　太一が首をかしげてくる。　

「冴島先生じゃ将来性ないからさ……」

「将来性？」

　心底不思議そうな太一を前に、涼介は一瞬返事に窮した。