Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


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　人文系の研究は得てして実益になることは少ない。

それを承知でこの世界に入るのなら問題ないが、

そうでないなら互いにとって不幸でしかないだろう。

「つまり、将来は大リーガーになるほうが夢をかなえられるってことさ」

　肩をすくめてみせると、太一は眉根を寄せ考え込む。

ここでこれ以上言うわけにもいかない。

どうしたものだろう、と言葉に苦慮していると、

野木崎がおもむろに口を開いた。

「そうね。そうとわかれば早くお暇しないとね」

「そうですね」

　現実的な言葉で同意してくる野木崎に、涼介は心から感謝した。

「先生、あわただしくて申し訳ないんですが、僕たち少々所用がありまして……」

　これ以上長居しても益は少ない。

冴島へ向かい退室を申しでると、太一の声がひっくり返った。

「え、もう帰るの？」

　どこか不満げな声音に涼介は黙り込む。

心から楽しんでいるらしい太一に申し訳なく思っていると、

野木崎が壁にかかっていた時計を見た。

「本当だわ、もうこんな時間！

太一くん早くしないとお母さんに怒られちゃうから行きましょうね」

　服を整え椅子を引く野木崎を見て太一が目を見開く。

「え、あ、うん。わかった。先生、お話聞かせてくれてありがとうございました」

　テーブルすれすれに頭を下げる太一を前に、冴島が眉間に皺を寄せる。

「それは残念だ。けどそれより君、卒論のほうはどうなってるんだい？」

　お楽しみの時間をつぶされたのがよほど嫌だったのか、冴島が矛先を向けてきた。