Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


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「え？　卒論、ですか？　ちゃんとやってますよ、はい」

　立ち上がりながら涼介は視線を逸らす。

（やべー。マジで忘れてた……）

　確か６月の中旬には先輩たちの中間発表があったはずだ。

それまでにはきちんとテーマを伝え、下準備を始めておかねばならない。

（けど、今はそれどころじゃないしなあ）

　考えなくてはならないことが多すぎる。

頭を掻きむしりたい衝動を必死に堪えていると、野木崎が立ちあがった。

「あわただしくてすみません。羊羹ご馳走様でした。

冴島先生のお話はとてもためになりました。ありがとうございました」

　丁寧に礼を告げる野木崎へ対し冴島が手を左右に振る。

「いえいえ、またいつでも寄っていらしてください。

羊羹ぐらいしかありませんが、ぜひ」

　ぜひ、の一言に熱を込める冴島を後ろ手に、涼介は太一を立ち上がらせる。

よほど野木崎の持っているネタが欲しいのだろう。

（難しいと思うけどな……）

　どんな事情だかは知らないが、野木崎がネタ元を話すことはないような気がする。

「それじゃあ、先生。失礼します」

　涼介は野木崎の横へ並び改めて一礼する。

顔をあげると、冴島が目尻を綻ばせた。