Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


一

�I�A

（ああ、そうか。この場合、俺のほうが横恋慕の役なのか）

　碧とみのりの関係を断ち切ろうとすれば、

自分はこの話の卑怯な婚約者と同じになってしまうだろう。

（そんなこと、俺はしない）

　たとえどんなに辛くとも、彼女たちの幸せを願うだろう。

握り締めていた掌をゆっくり開け見つめていると、野木崎の口調が変わった。

「若者の元へ駆け寄った娘に

獣人の娘が『お前のせいだ。お前が兄様を殺したんだ！』

そう言って背後から娘を突き刺したの」

　激しい口調で一気に話す野木崎を前に、涼介は誰かに刺されるみのりを思った。

（それだけはダメだ）

　今までは次期当主のみのりが殺されることなどないと考えていたが、

昨日以来でとんだ思い違いだと気づいた。

（どうなろうと俺は彼女を守る。それから……）

　今度は自分の身も守ろう。

涼介は頬につけられた絆創膏を撫でながら微かに頬を緩めた。

　一人考えに沈んでいるうちに、野木崎の話は佳境に入っていく。

「かなり深く刺された娘はそのまま若者の上に覆いかぶさるように倒れるの。

でも痛いはずなのに娘の顔は優しげに微笑んでいたのよ」

　厳かな口調の野木崎に太一が首をかしげる。

「どうして？」

　どうにもこの話の結末が辛いのだろう。

撤回して欲しそうな顔でぎゅっと眉根を寄せている太一の背中を、

野木崎が軽く叩いた。