Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


七


�@

「美都子様！」


　随分と頼りなさそうな男だ。慌てて頭を下げる涼介を見て、

美都子はそんな感想を抱いた。

だが、だからこそ娘の、次期当主であるみのりの伴侶には

ぴったりだと確信する。


（忠臣さんの言うとおりにしてよかったわ）


　梅畑の三男を娘の見合い相手に薦めてきたのは夫だった。

薦められたときには驚いたが、他に良い相手を見つけられて

いなかったため夫の案に乗っただけだ。

しかし、直接梅畑涼介という青年を見て、夫の考えに納得できた。


（あの青年なら御しやすそうだものね）


　美都子は、今頃自宅で会議の資料を作っているであろう夫の姿を

脳裏に浮かべ自然と頬を緩める。しかしそれも一瞬のことだった。


（なんで顔をあげないのかしら？）


　お辞儀をしたままピクリとも動こかない涼介を見て、

訝しく思った。


「え、美都子様って、え？」

「え、あの人が美都子様なの？　銅像よりも美人だね」


　美都子は涼介の両隣で素っ頓狂な声をあげている人物たちへ

順々に視線を向けた。