Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


一

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「お兄ちゃんも知ってたの？　さっきの話」


　律子が帰る間際に言っていたことを涼介に質問する。

しかし、青年からの返答はなかった。

いつもなら即座に返ってくるはずなのに、と太一は首をかしげる。


「兄さんたちの知り合い、なんてこともなさそうだし、

伯父さんたちでもなさそうだし……」


　目線を涼介へ向ければ、

彼は自問するかのようにブツブツと呟いていた。

太一はかまって貰えないことに寂しさを感じ、

青年の気を引こうと涼介の服を引っ張る。


「お兄ちゃん？　ねえ、お兄ちゃんてばっ！」


　腕を上下に揺さぶったおかげで

こちらの存在を思い出してくれたようだ。

涼介はばつが悪そうに後頭部へ手を当てる。


「うん。刺した時に微笑んでた、とかは知らないけどね。

そもそもこの話は市で特別な時以外

話しちゃいけないことになってるんだよ」

「え！　そうなの？」


　太一は涼介の言葉に驚き、目を見開く。

まさか律子から聞かされた話にそんな秘密が隠されていたなんて

思いもしなかった。