Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


七


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「え、あ、あの。なぜそれを？」


　自分だけの思い出だと思っていた話を振られ、涼介は目を瞬く。

苦い思い出だ。

肝心の彼女はまったく覚えていないようだし、

昨日の喧嘩の原因もそこが発端な気がしているため、

触れられるのは少し辛い。

だが、美都子はそんなことを気にする様子もなく、微笑む。

「あら当然じゃない。

当主とはいえ、わたくしは母親よ。小さな娘を一人歩きさせるわけがないでしょう？」


　そう言われてみればそうだ。


（じゃあ、あの時碧さんもいたのか……）


　あんなみっともないところを見られていたとは。

決まりが悪く頬をかきつつ口を開いた。


「確かに……。では、あれ以来、

僕がみのりさんに毛虫のごとく嫌われていることもご存知だと思うんですが」


　情けないことを母親に自ら口にするのは気が引けるが、

この場合致し方ないだろう。

小さく吐息すると、美都子が緩く肩を揺らす。


「ふふふ。それはあなたの勘違いよ。

あの子は昔から少し素直になれないところがあるの。

きっとそのせいであなたもそんなふうに思ってしまったのね」


　意味ありげな視線を向けられ、涼介は視線を落とす。

どうにもこの母親は事実を激しく誤認しているようだ。


（しかたない。言うしかないか）


　できれば穏便に済ませたかったが、ここまで言われてはそうもいかない。


「……あの、ごまかしても仕方がないので単刀直入に申し上げますが、

みのりさんには他に想う方がいらっしゃるようです。僕が入る余地などありませんよ」


　ためらいがちに告げると、美都子が微笑んだまま首を傾けた。