Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


七


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「ええ。あなたのお兄様、梅畑雅秋さんのことよ」


　涼介の目線から逸らすように、顔を微かに俯かせる。

青年の息を飲む音が聞こえてきた。


「兄が……何か……？」


　遠慮がちにこぼれた声が少し震えている。

信じられないと言わんばかりの涼介の態度に、美都子は確信した。


（企みに関わるどころか、まったく知らされていないんだわ）


　たぶん今回の見合いのことも、本人の預かり知らぬ間に進んで

いたのかもしれない。だから見合いに乗り気ではないのだろう。


（でも、あの子ためっていうのも嘘ではなさそうだったわね……）


　頬を染め、必死で説得しようとしたときの姿は演技には

見えなかった。きっと自分とは違い素直な人間なのだろう。

さっきからころころと表情を変える涼介を見て美都子はそう認識

した。


（操縦しやすそうで娘婿にはちょうどいいわね）


　だが、今彼を上手く操作しているのは長兄である梅畑市長だろう。

ろくに反抗もしないのは長兄の手腕によるものか、青年自身の

問題かは別として。この状況を維持したまま婿に入られるのは困る。

美都子はどう切り出すか考えあぐねた。