Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


七


�I�H

「そうよ。獣人を野放しにしておくことはとても危険なことだと

あなたもご存知でしょう。だからこそわたくしたち一族は民を守る

ために獣人を従えさせているのよ」


　外で涼介を待っている吉田太一という少年だって初等部で

習って知っていることを、なぜ改めて説明しなければならないのか。

それも梅宮と一緒に黄梅を守ってきた梅八家の彼に。

美都子は思惑通りにいかない苛立ちから少し声を荒げた。

だが、青年はそれに怯むことなく立ち向かってくる。


「それは兄や両親からもよく聞かされております。

ですが、俺はそのことには反対です。当家の祖父母も先代のことを

思い嘆いておりました。『獣人と人との共存は可能なはずだ』と」


　彼の口からこぼれ出た『先代』という言葉にピクリと眉が動いた。


（梅畑涼介の祖父……

そういえばお母様の派閥に梅畑の分家がいたわね）


　黄梅のためを思い、改革をしてきた自分のやり方を先代の

梅宮都実恵（とみえ）は気に入らなかったらしい。ことあるごとに

部下を使って邪魔をしてきた。


（お母様が逝去なさってもう１０年は過ぎたというのに……）


　ときおり亡霊のように舞い戻ってくる先代の存在を、

美都子は忌々しく思った。