Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


七


�I�I�B

「梅田さん。お客様がお帰りよ」


　美都子が碧の父親、保憲に声をかける。

　 ほどなくして、保憲が扉を開けてきた。

もう話すことはないということか。

腸が煮えくり返る気がしていた。

こんな母親の元にいて、みのりが幸せであるわけがない。


（ふざけるなよ！）


　それなら、なんとしても彼女は俺が助ける。

そんなことをみのりが望むとは思えないのはわかっているが、

このままこの母親の元にいては彼女の未来が潰れてしまう。


（冗談じゃない。俺は彼女に……）


　笑っていてほしい。

　そう思った途端、ふいに目の前の霧が晴れた。

ああ、そうだ。

自分はみのりが自然に笑っているのを見てみたいのだ。

たとえそれが自分に向けられたものでなかろうと、

彼女には幸せになってほしいのだ。


（あー、そうか、そういうことか）


　つまりは惚れているということか。

悟ったは良いが、失恋も決定していることに気がついて吐息する。

瞬間、美都子が不快げに眉根を寄せた。

自分のことを非難しているのだとでも思ったのだろうか。


（まあ、どうでもいいか）


　美都子がこの溜め息をどう取ろうともはや自分には関係ない。


「失礼いたしました」


　硬い表情を崩さぬまま、涼介は車を降りる。


「美都子様、扉を閉めさせていただきます」


　こちらには一瞥もくれず、保憲が扉を閉めた。


「失礼する」


　言葉だけかけて運転席に乗り込む保憲へ、涼介は無言で一礼した。