Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


二


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「市長の弟！

あなたあんな立派なお兄様がいらっしゃるのに小学生を連れまわすだなんて。

よくないことだってわからなかったんですか？」

　母親はひどい剣幕で涼介も嫌な汗をかくよりほかはない。

どう考えてもきちんと連絡を取らなかった自分が悪く、

太一の母親の言うことのほうに理があった。

（まいった……）

　頭を下げるよりほかに有効な手段も見当たらず自らの甘さに唇を噛み締めていると、

太一が抗議の声をあげた。

「違うよママ！　お兄ちゃんは悪くないんだよ！」

　援護射撃してくれる太一の言葉を母親が遮る。

「太一、あんたは黙ってなさい」

　ぴしりと言い放たれ、太一がぐっと押し黙った。

「今、そこにいるお兄さんと大事な話をしているの」

　確かに母親の言うとおりだ。

涼介はおずおずと視線をあげ、もう一度謝罪する。

「不測の事態だったとはいえ、僕の配慮がかけていました。申し訳ございません」

　どちらにしても、納得してくれるまであきらめるつもりはない。

そうでなければ、みのりや太一の思いが報われないではないか。

（諦めるのは自分だけで十分だ）

　拳を握り締めていると、太一が瞳を潤ませた。

「お兄ちゃん……。ママ、ごめんなさい。

ぼくが黄金梅を咲かせるためにお兄ちゃんに手伝ってもらってたんだよ」

「黄金梅ですって？」

　素直に本当の話を切り出してしまった太一を前に、

太一の母親が警戒心剥きだしにしてくる。

顰めていた眉間の皺をさらに深くして太一の母親に見据えられ、

涼介は内心で盛大な溜め息を吐いた。