Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


三


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「一美さん、さっきから何を話しているの？

お客さんなら早く入ってもらいなさいな」

「お義母さん、でも……あの」

　太一の祖母の言葉に彼の母親が言い淀む。

この事態を知っているのかいないのか。

ここは正直にもう一度太一の祖母へお伺いを立てるべきか、と口を開きかけた時、

先に太一の祖母の声がした。

「いつまでも話していたら近所迷惑になるわ。

変な噂でもたてられた大変だし、ね」

　やわらかい口調なれども仄かな怒りの波長を察知して、涼介は姿勢を正す。

「わかりました。……りっちゃん、聞こえてたわよね？

今、ドアを開けるから待ってて」

　こういう時、できる男ならどうするのだろう。

太一の母が緊張しきった口調で野木崎に返答するのを聞きながら、

涼介は己の不甲斐なさを痛感していた。

「カズちゃんありがとう」

　ドアホンに向かい野木崎が礼を告げる。

「ありがとうございます！」

　野木崎に倣い慌てて礼を述べると、野木崎が深く吐息した。

「なんとか話を聞いてもらえそうね」

　明るく言ってはいるが、その面に笑顔はない。

「はい。本当にありがとうございます。野木崎さん」

　少なくともこれで本人たちに直接説明する機会が得られる。

（やっぱり人生経験豊富な人って違うよなあ）

　自分もいつか、誰かを守れるくらい強くなれるのだろうか。

考えながら野木崎へ深く一礼すると、肩にぽんと手を置かれる。

「礼を言うのはまだ早いわよ」

　どこまでも現実的な野木崎を前に、涼介は悄然とする。

そうだ。勝負はこれからなのだ。

現実が重く圧し掛かり重い溜め息を吐いていると、

野木崎がそれより、と尋ねてくる。

「太一くんに連絡とか入れなくていいの？」

「そうだった！　太一君に連絡しないと」

　今頃相当心配していることだろう。

涼介は早く少年の心配を解こうと、急いでメールを打った。