Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


三


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「いえ。

太一君も関係者ですので、できればいていただきたいのですが」

（お兄ちゃん）


　太一は堂々と母に立ち向かっている涼介の声に聴き惚れる。

しかし一美はそんな青年の態度が許せなかったらしい。

両手を強く握りしめ咆哮した。


「あなたにとやかく言う権利があると思っているの！」

「お怒りはごもっともですが、

太一君の意見も聞いていただきたいんです」


　自分だったら尻尾を巻いて逃げ出しているだろう。

しかし涼介は怯むことなく説得を続ける。


（お兄ちゃんかっこいい）


　太一は青年へ尊敬の念を送った。

すると、涼介を援護するかのように律子が追従する。


「カズちゃん、私からもお願いするわ。

押し付けるだけだと勝手に家から出ちゃうかもしれないし、ね」

「お願いします」

「家からっ！……」

　食い下がる律子と涼介に、一美は息を飲み込むようにつぶやいた。

そして何かを思案し始める。

太一は動かなくなった母親を尻目に涼介たちの顔を見ようと

左右に体を揺らす。

しかしやはり、立ちはだかる母親の背中と扉が邪魔して

彼らを見ることはできなった。

それでも諦めきれずにウロウロと動いていると、

おもむろに一美が振り返る。


「……わかったわ。

太一、部屋へ戻らなくてもいいけど静かにしてるのよ」

「やったー！」


　両手をあげ喜んでいると、呆れたように苦笑する母親と目が合う。

そして、今まで自身の体で塞いでいた扉から離れた。


「いつまでもここにいても仕方ないからとりあえず、中に入って」

「ありがとう、カズちゃん」

「お邪魔いたします」


　一美が扉を開けると、律子を先頭に涼介が入ってくる。

太一は満面の笑みで彼らを迎えた。