Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


三


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（な……！）

　涼介は内心で呻く。

獣人に過激な人間がいることは身を持って知っている。

だが、まさか殺し合いが行われるほど荒れていた時代があったとは思わなかった。

「あんな汚らわしい存在に関わっていたら夫のように

太一の命だってなくなってしまうわ。

私は夫の亡骸の前で誓ったのよ！　もう獣人なんかに家族を失わせないとね」

「お義母さん……」

　太一の母が興奮し全身を震わせている太一の祖母の背中に手を置く。

何か事情があったのでは、とは思うが二の句が継げない。

自分にはまだ経験がないが、誰かを特別に思ったとして、

その人が害された時、自分はその加害者を許すことができるだろうか。

脳裏に一瞬だけ遠くを見つめるみのりの横顔が浮かび、唇を噛み締める。

（俺にも……無理だ……）

　何故みのりのことが頭に浮かんだのか意識もしないまま、

涼介は眉に手をあてる。

「……それは獣人が、

お祖母さんの旦那様を襲った……ということでしょうか？」

　ショックを悟られぬようどうにか声を絞りだすと、

太一が腕を掴んできた。

「違うよ。じぃちゃんは襲われてなんていないんだ。

じぃちゃんは、じぃちゃんは獣人を助けたんだよ」

　太一の思いがけない言葉に涼介は少年の瞳を覗き込む。

「そうなのかい？」

　確かめるように尋ねると、先に太一の祖母が声をあげた。

「太一、どうしてその話を」

　うろたえたようなその声音に目をしばたたいていると、

太一の母が彼女へ頭をさげる。

「すみませんお義母さん。私が話しました」

　眉間に皺を寄せ告げる太一の母を前に太一の祖母が黙り込むと、

太一が強く頷いた。