Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


三


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　下を向いた太一の目に涼介が何かを決意するかのように

拳をギュッと握りしめたのが見えた。


「差し出がましいことを言って申し訳ありません。

ですが、僕は太一君に諦めてほしくないんです。

そして、太一君のお祖母さんにも」

（お兄ちゃん……）


　毅然とした涼介の柔らかで低い声に太一は顔を上げる。

まっすぐに一美を見据えたあと青年の瞳は自分へ向き、

最後は祖母へと移動した。


（ぼくが諦めちゃったら、

ばぁちゃんも何かを諦めちゃうってこと？）


　そんなのはいやだ。

涼介が祖母に対して何を諦めないでほしいと思ったのかは

わからない。

だが、黄金梅を咲かせることを諦めてしまえば、

これまで築いてきた祖母との関係に小さなひずみのようなものが

できてしまうことだけはわかった。

一度できてしまったわだかまりをなくすことは難しい。

それは祖父の死からずっと獣人を憎しみ続けている

祖母を見てきたからわかる。


（ちゃんと言わなきゃ！）


　母と祖母を悲しませたいわけじゃない。でも諦めたくないのだ。

太一はズボンを握り、

自分の気持ちをぶつけるために母親の顔を見た。