Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


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「わざわざ、ごめんなさいね。でも嬉しいわ。ありがとう」


　律子が恐縮するように肩を竦めて見せる。

しかし、その表情は出された羊羹の分厚さに

目がくらんでいるようだった。


「わーい。いただきまーす」


　太一は厚さ２ｃｍ以上ありそうな羊羹を

すくいあげるようにフォークでさし、持ちあげる。

そして大きな口でパクリと羊羹をかじった。

独特の粘りが歯の裏に貼りつくと同時に、

餡子の甘みが口の中に広がる。


「いえいえ。

実は恥ずかしいんですけど羊羹たくさんいただいちゃってて……」

「そうなの？　それじゃあ、遠慮なくいただきますね」


　食べずに丸山と話している律子を尻目に

もぐもぐ口を動かしていると、冴島の笑い声が聞こえてくる。


「あはは。ありがとうございます。

お好きなだけ食べていってください」


　冴島が羊羹を口に入れるのを見て律子もフォークを手に取った。


「いえ、こちらこそごちそうになります」

「美味しい。お兄ちゃんも早く食べて！」


　太一は羊羹を食べようとしない涼介を急き立てるように、

羊羹が乗っている皿を彼のほうへと近づける。


「うん。いただきます」

「美味しいでしょう、お兄ちゃん」

「うん。久しぶりだからとってもおいしいよ」


　涼介が羊羹を口に入れた瞬間に太一は同意を求める。

咀嚼する間も与えなかったにも関わらず満面の笑みで応える涼介に、

太一はニコニコしながら残しておいたもう１切れにフォークをさした。