Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


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「ええっと、さっそくなんですけど、野木崎さん、でしたよね？

あの獣人の昔話ってどなたから聞いたんですか？」

　幸せそうに羊羹を飲み下したあと、やにわに友永が口火を切った。

「うわ、単刀直入ね」

　興味津々といった風情で身を乗りだす友永の言葉に、

隣へ座っていた丸山が突っ込む。

野木崎はどう答えるのだろう。

彼女のことだからやんわりと躱すだろうことは予想できるが、

主婦の躱しのバリエーションは広い。

「ごめんなさいね。その件については黙秘することにしたの。

すみません、羊羹をいただいたのにお力になれなくて」

　ふふふと軽い笑みを浮かべる野木崎に冴島もくくくっと声を立てる。

うわ、と大仰に天を仰いだのは友永だけだった。

「残念！　これで卒論楽勝だと思ったのに！」

　これは結構本気だったな、と涼介は内心で爆笑する。

自分も卒論そっちのけでバイト生活を送っているだけに、

声にだして突っ込めないのが悲しいが。

（まあ、いざとなったら一緒に苦しむからさ）

　胸の内で友永に語りかけていると、

野木崎が張りついたような笑顔を冴島へ向けた。

「元気な生徒さんですね」

「まあ、自分で調べろってことだよ、友永君。しかし、データが取れないのは残念だなあ」

　野木崎の言葉を流し友永を諭した冴島が、しかしちゃっかり願望を口にする。

「申し訳ありません」

　野木崎から丁寧に頭をさげられ、

今度こそ冴島は苦笑するほかないようだった。