Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


四


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「一応床見えてますからね〜」

「床が……ね……ははは」


　友永が遠い目をする。律子が乾いた笑みが室内に木霊する。


（足の踏み場があるなら十分片付いてると思うんだけどなー？）


　太一は大げさに驚く律子に内心で首を傾げた。

それでもすぐに、まあいいかと思い、羊羹を食べている涼介を見る。


「太郎さんって『すごタロ』の太郎様のことだよね、お兄ちゃん」


　冴島が口にした『太郎様』といえば雪姫様の旦那様で有名だが、

太一にはそれ以上になじみ深いものがあった。

それは今一番に買ってもらいたいゲームソフトの主人公が

『太郎様』をモデルにしたものだからだ。

太一が嬉々として涼介へ話しかけると、満面の笑みを向けてくる。


「そうだよ。『すごいぞ！　太郎さん』の梅田太郎さん」

「やっぱりそうなんだ！　先生、どんな話なの！」


　涼介からの返答に太鼓判をもらったような気分になり、

太一はわくわくしながら自席に戻った冴島へ顔を向けた。


「君、将来有望だね。うちの研究室へ来ないかい？」


　朗らかに笑いながら褒めてくる冴島に太一は照れくさくなる。


「えへへへ。でもぼくは野球選手になるから大学生にはならないんだ」


　太一は嬉しさのあまり頬を緩ませたが、

すぐに大事なことを思い出し冴島の誘いを断った。