Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
I
「君は俺と来るんだ!」
このままでは本当に連行されてしまう。みのりは半ば投げやり
気味に喚き始めた。
「ちょっとなんでみんな助けてくれないのよー」
「お嬢さま」
「紅、これは上司からの命令だから」
碧に行く手を阻まれている紅の声が聞こえる。しかし、碧に説得
され押し黙ってしまった。すぐに涼介の声が木霊する。
「いいから、行くぞ! ほら!」
全体重をかけて腰を落としているにも関わらず、ずるずると引き
ずられていく。そんな中、主を助けもようともしない碧が満面の
笑みで涼介へ頭を下げた。
「涼介君、お嬢様をよろしくお願いしますね」
「ありがとうございます、碧さん」
碧の一礼に、他の面々が談笑しながら野臥間邸へと戻って行く。
みのりは捨て鉢気味に叫んだ。
「こんの、裏切者ー!」
しかしながら薄情な人々はこちらを見ることなく立ち去って
行った。唯一紅だけが悲痛そうな顔で一礼したのが見えたが、
碧に背中を押されて行ってしまう。
(本当に行っちゃったの?)
冗談とかではなく、本気で涼介に任せるつもりなのだろうか。
この男の言うとおりにしたら、実家へ帰ることになってしまう。
そんなことは絶対に嫌だ。みのりは最後の力を振り絞り、暴れ
始めた。
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