Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
四
IH
「え?」
突然勢いよく引っ張られる。身体を襲った衝撃に訳が分からず、
みのりは目を白黒させた。
(な、なんで?)
なぜ自分は涼介の腕の中にいるのだろう。
彼が好意を寄せているのは紅のはずだ。
あんな愛おしそうに微笑みながら見つめていたのだから間違いない。
それなのに今の状況はなんなのだろうか。
(もしかして紅に頼まれたとか?)
お人よしの彼のことだ。好きな相手からの頼み事ならばなおさら、
断るはずがないだろう。
(こんなことされたって惨めなだけなのに……)
それでも涼介の温もりを全身で感じられることが嬉しくて、
みのりは動けずにいた。
(紅ごめん)
今思えば紅も涼介が好きなのかもしれない。
ここへ来るまでにたびたび遭遇した彼女らしからぬ行動にも
それならば説明がつく。
(好きな人の隣に別の相手がいたらやきもち焼いちゃうのは
当然よね)
ズキズキと胸が痛んだ。2人がすでに付き合っているかどうかは
わからない。しかしながら自分の失恋は確実だということだけは
わかった。
(うん。やっぱり黄金梅を実らせてお見合いを破談にしなくっちゃ)
みのりはあふれ出そうになる涙をこらえる。そして涼介の腕から
離れようと身じろいだ。
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