Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIA




「そんなことって、私はあんたのためを思って……もう知らない!」


 みのりはフンッと涼介から顔を背ける。それが余計に癪に障った

らしい。わざわざ真正面に立ち、人差し指を突き出してきた。


「知らないってなんだよ! 君の命のほうが大事だろう!」


 必死で失恋の痛みに耐えているというのに、涼介は何も

わかっていない。確かに命は大切だ。だけどそのせいで好きな子を

傷つけるのは違う気がする。


(人がどんな気持ちで言ってると思ってるのよ!)

「ねえ、今ってすっごく緊迫する場面よね? なんであの子たち

痴話喧嘩してるのかしら?」

「そうですよね……。でも、なんかロマンチックかも……」

「おいおい」


 野木崎と麻里の会話に山波が嘆息を漏らす。

みのりはそれを聞き流し、涼介に言い返した。


「そういうこと言ってるんじゃないわよ! わからずやっ!」

「なんだそれ! お目当ての人じゃないからって拗ねるなよな!」


 間髪入れずに応えた涼介の言葉にみのりは内心で首をかしげた。


(お目当ての人って誰よ? それはそっちでしょうが)


 本当は紅を守りたかったに違いない。だがそうしなかったのは

涼介のほうではないか。


「ふふふ。お兄ちゃんたち元に戻ったみたいだ」


 嬉しそうに笑う太一に反比例するかのように、フツフツと怒りが

湧いてきた。


「……おじょ」

「はいはい。紅は邪魔をしない」

「……」


 近づこうとしてきた紅を碧が止める。本当だったら涼介のそばに

来たかったに違いない。紅が悲しげに顔を歪ませた。










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