Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IC




「さぞや立派な方だったのでしょうなあ」


 雪姫の言葉に感想を述べたのは自分ではなく山波だった。

雪姫は山波を静かに見つめ、頷く。


「そうだな。太郎はいい男だった。

世継ぎでもなかったのに、獣人たちのために世継ぎになり

この地を治めてくれたのだからな」

「え! 嘘」


 昔を語る雪姫にみのりが目を見開く。

無理もない。太郎様が世継ぎではなかったという記述は、

どの古文書にも記載されていなかったのだから。


(しかも、獣人たちのためにって……)


 ということは、そもそも梅八家が獣人を阻害する因縁など

存在しないということではないか。


(今日はまたびっくりすることばかりだな)


 初めて聞く話に心臓が口から飛び出そうだ。

この話聞いたら兄の雅秋も卒倒するのではないだろうか。


(それか逆ギレするか、かな?)


 激昂する長兄の姿を頭で描き溜め息を吐いていると、

山波が小さく唸った。










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