Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IH




「言わなくてもわかるだろうなんて考えはダメってことね」


 野木崎の言葉が胸に刺さる。みのりは呻き声を漏らさぬように

胸元へ手を当てた。


(それってお母様に自分の気持ちすら言えていないのに、

わかってくれないなんて言っちゃだめってことよね……)


 だが聞く側に受け入れてくれる様子がないのにどう言えば、

伝わると言うのだろう。


(やっぱりお母様に対話を持ちかけるのは無理なんだわ)


 みのりは唇を噛みしめる。すると麻里がどこか思いつめた表情で

野木崎へ詰め寄った。


「でも、相手が頑なだってこともあると思いますよ?

聞いてくれないんじゃどうしようもないじゃないですか」


 麻里も自分と同じような相手がいるのだろうか。

みのりはごくりとつばを飲み込む。だが、答えたのは野木崎では

なかった。顰め面で腕を組んでいる山波が、睨みつけるように

麻里を見る。


「そんなもんは言うこと聞かせるように持っていけばいいんだ」

「それはちょっと暴論じゃないかと思うんですが……」


 フンッと鼻に皺を作って言い切る山波へ、

涼介が引き攣った笑みを向けた。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む