Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





II




「では僕が殿を務めましょう」


 碧の言葉に涼介は目をしばたたく。


「え? いいんですか? 殿は俺でも……」


 みのりの傍へいなくていいのだろうか。

碧の表情を窺うと、不自然なほど朗らかな笑みとぶつかった。


「はい。紅をみのり様のそばへ置くので問題ありません。いいね、紅」

「わかった」


 迷いのない兄妹の会話に目を点にする。


(信頼度の違いってやつかな?)


 自分たち兄弟ではこうはいかないだろう。

通じ合っている2人が微笑ましくも羨ましい。

しばし碧たちをぼんやりと見つめていると、

太一が携帯を差し出してきた。


「お兄ちゃんはい」

「あ、ああ。ありがとう……」


 慌てて受け取り、耳にあてる。

待っているだろう通話相手に向い声をかけた。


「もしもし、毎日何度もすみません、太一君のお母さん……」


 くわしく事情を話していると、律子が高く手を打った。


「こうなったらさっさと行って、さーっと帰るわよ!」

「はい!」

 気合いの入った物言いに麻里が答える。

どうやら決意を固めたらしい。


(野木崎さんって実は凛々しいんだよな)


 男っぽいわけではないが、一度決断すると早いところがある。


(まあ、文句は言い続けるけど)


 苦笑しながら太一の母に今一度礼を言い通話を切る。

「それでは皆様、私のあとについてきてください」

「はい!」


 遥か上を指し示すのみを前に、涼介は大きく頷いた。










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