Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
六
II
「では僕が殿を務めましょう」
碧の言葉に涼介は目をしばたたく。
「え? いいんですか? 殿は俺でも……」
みのりの傍へいなくていいのだろうか。
碧の表情を窺うと、不自然なほど朗らかな笑みとぶつかった。
「はい。紅をみのり様のそばへ置くので問題ありません。いいね、紅」
「わかった」
迷いのない兄妹の会話に目を点にする。
(信頼度の違いってやつかな?)
自分たち兄弟ではこうはいかないだろう。
通じ合っている2人が微笑ましくも羨ましい。
しばし碧たちをぼんやりと見つめていると、
太一が携帯を差し出してきた。
「お兄ちゃんはい」
「あ、ああ。ありがとう……」
慌てて受け取り、耳にあてる。
待っているだろう通話相手に向い声をかけた。
「もしもし、毎日何度もすみません、太一君のお母さん……」
くわしく事情を話していると、律子が高く手を打った。
「こうなったらさっさと行って、さーっと帰るわよ!」
「はい!」
気合いの入った物言いに麻里が答える。
どうやら決意を固めたらしい。
(野木崎さんって実は凛々しいんだよな)
男っぽいわけではないが、一度決断すると早いところがある。
(まあ、文句は言い続けるけど)
苦笑しながら太一の母に今一度礼を言い通話を切る。
「それでは皆様、私のあとについてきてください」
「はい!」
遥か上を指し示すのみを前に、涼介は大きく頷いた。
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