Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
ID
「さっきからバカの一つ覚えみたいに……」
いい加減勘弁してもらいたい。
急にじっと見つめてきたかと思えば、またこの押し問答の繰り返しだ。
(しかもずっと見てるって何よ! ずっとってことは一生ってこと
なのよ。見合いなんて断るって言ってたくせに嘘つき!)
動揺をさせるだけさせといて、本当に腹立たしい男だ。
(それにお母様のことだってそうよ。
きっと私が追及しなかったら有耶無耶にするつもりだったんだわ)
みのりは眉をしかめた。このままでは腹の虫が治まらない。
何かいい方法はないかと思考し、ピンッときた。
「そういうあなたは逃げないで、裸でぶつかったさぞ素晴らしい
人生だったんでしょうね!」
嫌味っぽく聞こえるように涼介を見上げる。長男の言いなりに
なるような男だ。涼介だって本心を言ってこなかったに違いない。
(口ごもって、たじろげばいいのよ)
しかし、予想に反して涼介は間髪入れずに応えてきた。
「俺もこれからぶつかるのさ」
彼は言い切ると、自嘲気味に肩を竦める。
そして、ふぅつと短く息を吐いた。
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