Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
七
A
「まだですよ、きっと」
「歩き始めたばかり」
(神社はまだ先なのね。良かった余計なことを言わなくて)
みのりは胸をなで下ろす。
(それにしても体感的には結構歩いた気でいたんだけどなー)
こちらを気遣うように隣を歩く紅の呟きに心の中で驚いていると、
人一倍元気そうな麻里の声が木霊した。
「疲れてるんですか? 大丈夫ですか?」
(小越先生って意外と体力があるのね)
案外体育会系なのかもしれない。
後ろを振り向かずにそんなこと考えていると、野木崎の愚痴が
再び始まった。
「まったくなんで山歩きなんてしないといけないのよ。
今日は早く家に帰れると思ったのに……」
「まったくだ」
野木崎の言葉に山波が同意する。どこか険のある物言いだ。
みのりは眉間に皺を寄せた。
(山波さんの態度が今までとは違うような気がするんだけど……?)
彼は雪姫や梅宮の人間である自分に対して、どちらかと言えば
従順な態度を取っていたはずだ。それが、ここにきて少し変わって
きている気がする。
山波はどちらかと言えば現当主寄りの考えの持ち主だ。
先ほどだって一人だけ獣人に対して辛辣な言葉を向けていた。
本家の手の者なのだろうか。都とつながっている麻里の存在がある
のだから、本家とつながっている人間がいても不思議はない。
(ううん、考え過ぎよね)
みのりは自分の考えを否定するように、小さく首を横へ振った。
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