Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





A




「まだですよ、きっと」

「歩き始めたばかり」

(神社はまだ先なのね。良かった余計なことを言わなくて)


 みのりは胸をなで下ろす。


(それにしても体感的には結構歩いた気でいたんだけどなー)


 こちらを気遣うように隣を歩く紅の呟きに心の中で驚いていると、

人一倍元気そうな麻里の声が木霊した。


「疲れてるんですか? 大丈夫ですか?」

(小越先生って意外と体力があるのね)


 案外体育会系なのかもしれない。

後ろを振り向かずにそんなこと考えていると、野木崎の愚痴が

再び始まった。


「まったくなんで山歩きなんてしないといけないのよ。

今日は早く家に帰れると思ったのに……」

「まったくだ」


 野木崎の言葉に山波が同意する。どこか険のある物言いだ。

みのりは眉間に皺を寄せた。


(山波さんの態度が今までとは違うような気がするんだけど……?)


 彼は雪姫や梅宮の人間である自分に対して、どちらかと言えば

従順な態度を取っていたはずだ。それが、ここにきて少し変わって

きている気がする。


 山波はどちらかと言えば現当主寄りの考えの持ち主だ。

先ほどだって一人だけ獣人に対して辛辣な言葉を向けていた。

本家の手の者なのだろうか。都とつながっている麻里の存在がある

のだから、本家とつながっている人間がいても不思議はない。


(ううん、考え過ぎよね)


 みのりは自分の考えを否定するように、小さく首を横へ振った。










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