Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
七
IB
「……そ、そんなことは……!」
「それは……」
ぐうの音もでなかった。それは麻里も同じだったみたいだ。
これまで次期当主として獣人の差別についてそれなりに学んで
きたつもりだった。でも、『見合い』という強制的な未来を
突きつけられてからというもの、ただ逃げ出したいという気持ちで
ここまで走ってきた気がする。
黄金梅の呪縛から解き放たれれば自分は幸せになれるかもしれない。
だが獣人たちは、どうだろう。律子の言う通りもっと劣悪な環境に
陥るかもしれない。
黄金梅に縋って生きている人間たちはどうなるのだろう。
(自分のせいで不幸になるかもしれない……)
獣人である紅という存在が近くにいるのになぜこんな大切なことを
気づかなったのだろう。みのりは愕然とした。
(でも……それじゃあ、どうすればいいの? 黄金梅があるせいで
涼介は好きでもない私とお見合いなんかさせられちゃうのよ……)
言えるはずのない本音が心の中を駆け回る。
いつの間にかみんなの足は止まり、野木崎に視線が集中していた。
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