Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IF




 探りを入れるためだったにせよ、何らかの意図があったにせよ、

美都子が涼介に市長のことを告げたのは間違いないらしい。


(ああもう、次から次へとなんなのよ! だいたいお母様のこと

なんて考えてもわからないんだから悩むだけ時間の無駄だわ)


 とりあえず今はさっき聞いてしまったことをどう処理するべきか

を考えるほうが先決だ。みのりは市長たちのことを思い浮かべる。

ふいに先ほど言った涼介の言葉が脳裏をよぎった。


『俺もこれからぶつかるのさ』


 彼らしくない物言いに、気づけば声がこぼれ落ちていた。


「でも意外だわ」

「ん? 何が?」


 涼介が襟足へ手を置いたまま首をかしげる。

みのりは意地を張ることなく、するりと思ったことを口にした。


「だってあんたってお兄さんの言いなりって感じなのに、

お兄さんに正面からぶつかっていけるんでしょう?

だから意外だなって」


 あまり涼介のことを知っているわけではない。

だが、これまで共に行動してきた中で、自分の意思を主張する

ような人間ではないと思っていた。

むしろ自分の我を通して諍いを起こすくらいならば、

いいなりになって場を収めようとする人間だろうと認識していた

くらいだ。それなのに蓋を開けてみれば、涼介は自分が考えていた

人物像とは逆の考えをする人間だったらしい。










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