Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
IF
探りを入れるためだったにせよ、何らかの意図があったにせよ、
美都子が涼介に市長のことを告げたのは間違いないらしい。
(ああもう、次から次へとなんなのよ! だいたいお母様のこと
なんて考えてもわからないんだから悩むだけ時間の無駄だわ)
とりあえず今はさっき聞いてしまったことをどう処理するべきか
を考えるほうが先決だ。みのりは市長たちのことを思い浮かべる。
ふいに先ほど言った涼介の言葉が脳裏をよぎった。
『俺もこれからぶつかるのさ』
彼らしくない物言いに、気づけば声がこぼれ落ちていた。
「でも意外だわ」
「ん? 何が?」
涼介が襟足へ手を置いたまま首をかしげる。
みのりは意地を張ることなく、するりと思ったことを口にした。
「だってあんたってお兄さんの言いなりって感じなのに、
お兄さんに正面からぶつかっていけるんでしょう?
だから意外だなって」
あまり涼介のことを知っているわけではない。
だが、これまで共に行動してきた中で、自分の意思を主張する
ような人間ではないと思っていた。
むしろ自分の我を通して諍いを起こすくらいならば、
いいなりになって場を収めようとする人間だろうと認識していた
くらいだ。それなのに蓋を開けてみれば、涼介は自分が考えていた
人物像とは逆の考えをする人間だったらしい。
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