Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





E




「な! んっんん!

……いや、お見苦しい顔をお見せしてしまい、申し訳ございませんでした」


 言いたい言葉を必死で飲み込んだのだろう。

小刻みに身体を震わせつつ深く頭を垂れる山波へ、雪姫が頷く。


「構わないマロよ。これだったら太郎も悋気はしなかったであろうマロ」

「そうですわね。当時は若者の集まりでしたから、

雪姫様を取られまいと兄様はいつも目くじらを

立ておりましたものね。ふふふふ」


 思い出話に花を咲かせるのみと雪姫の真向いで、山波が震えている。


(面倒なことになったなあ)


 これでは溝が深まるばかりだ。

自分がフォローしたほうがいいのだろうか。それとも……。

涼介は苦笑しつつ、ちらりと碧の様子を窺う。

彼だったらもっと上手くこの場を収められるのではないかと思うと、

なぜか胸の奥が痛んだ。


(もう少し気の利いたことが言えたらな)


 だが残念なことに、自分には何も言うべき言葉が見つからない。

そんなことをあれこれと考えているうちに、やはり碧が話に割って入った。


「そんな面白いことが起きていたとは知りませんでした」


 柔和な声音で告げ、にこりと微笑んでくる。

どうやらこちらの視線はとうに気づかれていたようだ。

涼介は碧に小さく一礼し、苦い思いのまま視線を上向けた。










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