Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





F




「いい匂い」


 なんとなく重たい空気を破ったのは紅の一言だった。

盃のある場所がわかったのだろうか。


「え? どこからだい?」


 確かめたくて紅へ近づくと、雪姫の感心したような声が耳に届く。


「さすが獣人マロ」

「もしかして、盃の場所が近いの?」


 隣にいたみのりに紅が小さく頷き、指を差した。

慌てて視線を向ける。

だが、眼前には梅の木々が広がるのみである。


「ふふふ。雪姫様のおっしゃる通りですね。獣人さんは

本当に可愛らしいですね」


 ころころと笑うのみに目をやると、

近くにいた山波が俯いたまま足元を微かに鳴らした。


(機嫌悪いみたいだなあ……)


 獣人、という言葉へ対し、以前よりさらに敏感になっているようだ。

やはり先にガス抜きをさせておくべきなのではないだろうか。

決心がつきかねて眉根を寄せていると、野木崎が口に手をやる。


「え、獣人が可愛いとか今の会話に関係あるの?」


 どこまでも常識人の野木崎に対し、小越が首を傾げた。










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