Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
F
「いい匂い」
なんとなく重たい空気を破ったのは紅の一言だった。
盃のある場所がわかったのだろうか。
「え? どこからだい?」
確かめたくて紅へ近づくと、雪姫の感心したような声が耳に届く。
「さすが獣人マロ」
「もしかして、盃の場所が近いの?」
隣にいたみのりに紅が小さく頷き、指を差した。
慌てて視線を向ける。
だが、眼前には梅の木々が広がるのみである。
「ふふふ。雪姫様のおっしゃる通りですね。獣人さんは
本当に可愛らしいですね」
ころころと笑うのみに目をやると、
近くにいた山波が俯いたまま足元を微かに鳴らした。
(機嫌悪いみたいだなあ……)
獣人、という言葉へ対し、以前よりさらに敏感になっているようだ。
やはり先にガス抜きをさせておくべきなのではないだろうか。
決心がつきかねて眉根を寄せていると、野木崎が口に手をやる。
「え、獣人が可愛いとか今の会話に関係あるの?」
どこまでも常識人の野木崎に対し、小越が首を傾げた。
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