Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





H




「兄さん、うざい」


 普段より一段低い声を出した紅に、みのりは息を飲む。

近くにいた涼介との仲を碧に邪魔されてしまったらしい。

距離を取るように離れた涼介の背中を眺めている紅を見て、

みのりは胸が苦しくなった。


(やっぱり紅も好きな人の近くにいたいんだ……)


 両想いの2人を羨ましく思いながらみのりは彼らから視線を逸らす。


「紅ー!」


 碧の悲痛な叫びは、自分の気持ちを表しているようだった。


(この中で碧の気持ちがわかるのは私だけね)


 紅のことをずっと想い続けている彼のことを応援してあげたい

気持ちはもちろんある。けれど彼女の気持ちが涼介にある以上、

紅の幸せを願いたい。


(最初は無理でも碧だったらきっとわかってくれるわよね)


 でももし碧が逆上して涼介へ危害を加えようとしたら、

そのときは自分が涼介のことを守ろう。


(2人を幸せにするためにも黄金梅をちゃんと

実らせなくっちゃ!)


 みのりは決意を胸に秘め、ぎゅっと拳をつくる。


「あっちに盃があるの? わーい!」


 ふいに聞こえてきた子供特有の高い声で、我に返った。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む