Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
H
「兄さん、うざい」
普段より一段低い声を出した紅に、みのりは息を飲む。
近くにいた涼介との仲を碧に邪魔されてしまったらしい。
距離を取るように離れた涼介の背中を眺めている紅を見て、
みのりは胸が苦しくなった。
(やっぱり紅も好きな人の近くにいたいんだ……)
両想いの2人を羨ましく思いながらみのりは彼らから視線を逸らす。
「紅ー!」
碧の悲痛な叫びは、自分の気持ちを表しているようだった。
(この中で碧の気持ちがわかるのは私だけね)
紅のことをずっと想い続けている彼のことを応援してあげたい
気持ちはもちろんある。けれど彼女の気持ちが涼介にある以上、
紅の幸せを願いたい。
(最初は無理でも碧だったらきっとわかってくれるわよね)
でももし碧が逆上して涼介へ危害を加えようとしたら、
そのときは自分が涼介のことを守ろう。
(2人を幸せにするためにも黄金梅をちゃんと
実らせなくっちゃ!)
みのりは決意を胸に秘め、ぎゅっと拳をつくる。
「あっちに盃があるの? わーい!」
ふいに聞こえてきた子供特有の高い声で、我に返った。
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