Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
I
どうやら考え事している間に話が進んでしまっていたみたいだ。
みのりが周囲のざわめきに耳を傾けると、太一が愉しそうに走り
出していた。
「あ! 太一君!」
「童は元気マロ」
「はい。雪姫様のおっしゃる通りです」
雪姫とのみが太一を追いかける涼介の背中を見送りながら、
呑気な感想を交わしている。
「ちょっと、梅畑君! 太一君!」
「あ、待ってください! 律子さん!」
傍観している雪姫たちを横目に野木崎が走り出した。そのあとを
麻里と山波が続く。目まぐるしく移動を始める面々にみのりが
まばたきを繰り返していると、おもむろに手を握られた。
「お嬢さま、行こ?」
(私も涼介のことが好きだって紅が知ったら、紅は自分の気持ちを
なかったことにしちゃうんだろうな……)
こちらを見つめる紅の顔を見て、ふと脳裏にそんな考えがよぎる。
(そんなの絶対ダメよ! そんなことされたって嬉しくないし、
誰も幸せになんてならないんだから)
みのりはすぐに思考を停止させた。
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