Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
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(さっさと黄金梅を実らせよう。
そうすれば余計なことを考えずに済むんだから)
みのりは、取り繕うように紅へ微笑む。
「え、ええ。そうね」
碧へ移動することを目線のみで伝えると、先導するように碧が
前を歩き出した。みのりはゆっくりと歩いているのみたちを
追い抜かすように、小走りで先へ進んだ。
先に太一たちのあとを追って行った野木崎の背中を捉えた頃。
感嘆する太一の声が辺りに木霊する。みのりは隣で並走している
紅を従え、急いで少年の元へ駆け寄った。
「わぁ! 見てみて小さな祠があるよ!」
太一の指差す方へ山波や麻里、涼介の視線が集中する。そこには
両隣に立っている梅の木に紛れる形の祠が建っていた。
防犯灯しかない暗闇の中ではそのまま素通りしていてもおかしくない。
太一の視力の良さに、みのりが胸をなで下ろしていると、涼介が
1歩前へ出た。
「本当だ。ここに盃があるのか?」
彼の声にみのりも太一や麻里たちをかき分け祠の前に立つ。
閉じられている祠の扉の隙間から覗こうとするが、暗くてよく見えない。
「この中に盃が?」
「うん。そんな気はするけど、勝手に触らないほうがいいと思ってさ」
涼介がこちらの問いかけに肩を竦めて見せた。
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